『地域を豊かにする働き方』(関満博/ちくまプリマー新書)
著者の関さんにお会いしたことがある。携わっているシンポジウムに出て頂いて、その打合せとシンポジウム当日にお会いしたと記憶している。あまり定かでないのは、これまでたくさんのシンポジウムに携わってきたけれど、キャスティングすべてを任されていたものと、そうではなく主催者が決めた講師と調整・打合せをする場合とあって、関さんの場合は確か後者だったからである。あまりそれまでご本人への知識がなかったパターンなのだけれど、お会いしてみて、知らなかったけれどこんな人がいたんだ、と驚いた覚えがある。現場寄りのプロフェッショナル、そういう佇まいの方だった。
この本のメインは震災後、そこから立ち上がる地域の企業の方々の話。どんなに大変な目に会っても、そこから力強く再び仕事を再開する人々。あらためて“働く”ということは、人間にとって何なのかを、考えさせられる。ここのところ“働く”ということを考え続けているが、そのことへのヒントに溢れている。中でも自分を鑑みとくに印象深いのはこの部分だった。
「一般に、勤めているよりも独立して自分で事業を起こす方が、三倍は仕事をする、と言われており、そのような人が増えると地域も活性化するのです。」(p66)
わが社の社員が皆、独立して事業を起こして行くようになったらいいなと思う反面、もし自分が起業していなかったら、今の三分の一しか仕事していなかったかもしれない。それってかなり仕事しない人になってたんじゃないかなぁと想像したら、結構笑っていられない。いろんなことがあったけれど、自分で会社をやり始めて20年を過ぎた。独立せずにこの20年間の1/3の仕事量だったとしたら、果たして僕は今どんな人間になっていただろうか。
(日々本 第118回 針谷和昌)
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