『オレの宇宙はまだまだ遠い』(益田ミリ/講談社)
書店員(土田くん)が主人公の漫画です。そんな漫画、世界唯一?かもしれません。書店の日常がよくわかるのはもちろんなんですが、中に出てくる「あったかい本フェア」にも、この本自体が並びそう。そんな錯覚を起こさせてくれるのは、作者の益田ミリが本人名で漫画の中に登場して土田くんと話したりするんです。こんなのも世界唯一なのではないでしょうか。
子供の頃から可愛がってくれた伯父さんの影響で本好きになった土田くんが、伯父さんが亡くなって伯母さんに形見分けに何がほしいと聞かれて、「伯父さんが 最後に読んでた本をください」と答えます。僕はここがこの本の最も「あったかい」ところだと思います。土田くんは常に淡々としていて、淡々と語るからこそこの言葉が響いて来ます。
土田くんの後輩が電車の中で、「電車で文庫本読む人って減ったな〜」「そーゆーオレも ケータイで時間つぶすこと多くなったけど」「子供の頃、 文庫本読んでる大人見て カッコイイなって思ってたんだよなあ」というシーンは、本の宇宙の新メンバーY君のアイデア「持っているとカッコイイ本」に通じています。このアイデアを秋からの展開を予定している慶大の書店での特別展に活かし、ひとつのコーナーを作りたいと考えています。
巻末には、「土田くんの本棚」と題して、この本に登場した書籍一覧の表紙、タイトル、著者、出版社が並んでいます。なるほど、こういう本の紹介の方法もあるんだなぁと、気づかされました。益田ミリさんの漫画を初めて読みましたが、大発見の気分。本の宇宙のプロジェクトをいつか一緒にやっていただけたら嬉しいなぁと思います。
(日々本 第111回 針谷和昌)
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