『石川遼自伝 僕の歩いてきた道』(石川遼/講談社)
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石川選手が自伝を書くには早いかもしれない。でも、あの高1でプロツアーに優勝した年からもう5年が過ぎた。その間にこの王子は、人々の期待以上の活躍を見せ、成長を続けている。どうして彼は、大仕事を簡単にやってしまうのだろう?この本からその秘密が垣間見える。
▶僕は大の目立ちたがり屋だ。
▶ゴルファーとして僕はこれまですべてのチャンスをものにしてきたと考えている。
▶うまくいかないことがあると悔しく、「もっとうまくなりたい」という向上心を強く持てたのがゴルフだった。
▶そして父が自分を犠牲にして僕と一緒に夢を追ってくれているならば、僕もある程度は犠牲を払わなければいけない。
▶ゴルフはすべて自分の責任の下で行われるため、とにかく自由なのだ。
▶「どんな鳥でも想像より高く飛ぶことはできない」。
▶「急がば回るな」
▶「どちらがマイナスか」ではなく「どちらが僕にとってよりプラスに働くのか」を考えていた。
▶ミスをするかもしれないけれど、リスクのある近道を選んだほうがスリルがあるし、ワクワクする。
▶「待ってろ!タイガー」
▶「やっぱりオーガスタは、僕に合っている!」
▶プロゴルファーはライバルの失敗を望むよりも、「おまえも入れてこい、そうしたら俺も入れてやる」という気構えでなければいけないと思う。
▶お世話になった人々に感謝の気持ちを伝えるのは当然として、その場にいる人々が幸福になれるようなスピーチを常に心がけたい。
▶僕の好きな言葉で、自分自身を燃えさせるときに使うフレーズがある。「圧倒する」だ。
とくに印象に残る文章をピックアップしてみたが、自伝を書くのが決して早くはないということが、これらの言葉からわかるのではないか。
僕はまだ石川選手には会ったことがないが、宮里藍選手とは仕事をしたことがある。とてつもなく頭の回転が速い、人が何を望んでいるかを一瞬にして把握し、しかもそれに十二分に応える能力の持ち主。その彼女から、東日本大震災直後に、石川選手に送られてきたメールが披露されている。
今まで続けてきたことを続けることが一番大切。特別なこと、今までやったことのないことを無理矢理やろうとすると、スポーツの力というのは薄れていってしまう。…そういう主旨のメール。これらの言葉も深い。
石川選手は子供の頃からいろいろな読書をしてきたそうだ。『イソップ物語』『伊豆の踊り子』『野菊の墓』『雪国』『老人と海』…彼の表現力の豊かさの背景を、これらの本群が支えていると思うと、石川遼が“読書”のキャラクターにもなれるという楽しいイメージが膨らんでくる。
(日々本 第108回 針谷和昌)
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