『小沢一郎と田中角栄』(木下英治/角川SSC新書)
小沢一郎はなぜ正面に出ずに、後ろ側でコントロールする役目を常に選ぶのかということが、ずっと疑問だった。この本を読むと、本気で総理大臣になりたくないと思っている、ということがその最大の理由だということがわかる。
小沢一郎の政治家としての目標は、総理大臣になることではなく、国会議員としていい影響を日本の国の後世に残すことなのだそうだ。日本の伝統・文化を大切にする保守系の政党と、伝統文化を大切にしながらも革新的なことにも積極的な政党の、保守系の二大政党をつくりたいという。
小沢一郎には新しいグループをつくっては壊していくイメージがあるが、大臣の椅子もつくった政党も大事なのではなく、政治を変えるということに最大のモチベーションがあるということもわかる。そうすると、今後どう動いていくのかも、ある程度見えるような気がしてくる。
普通の政治家の感覚と違うので、なんだかとっても複雑な人のように思えるのだが、「僕は、沖縄にはもう米軍基地はいらないと思っている。クリントンが、その問題を言い出したら、余程『あんな綺麗な海に滑走路を作るなんて、馬鹿じゃないか』と言おうと思ったけどね。」(P246-247)というコメントを読むと、案外、複雑なのは他の政治家で、小沢一郎はシンプルなのかもしれないという気もしてくる。
そろそろ集大成ということになるのだろうか。
(日々本 第87回 針谷和昌)
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