日々本 其の八十一「五○○億ドルでできる」

『環境危機をあおってはいけない 地球環境のホントの実態』(山形浩生 訳/文藝春秋)『地球と一緒に頭も冷やせ! 温暖化問題を問い直す』(山形浩生 訳/ソフトバンククリエイティブ)のロンボルグ(デンマークの政治学者)の編書。

いつも気になるロンボルグなのにこの本だけ読んでいなかったのは、どうしてだっったっけ?出版されて4年、その間になぜかこの本だけ買わなかった理由がある筈だが、もはや覚えていない。編書だからだろうか。今回は、編だろうが著だろうが関係なく、いまの世界の緊急課題を把握したくて読むことにした。

『五○○億ドルでできること』(ビョルン・ロンボルグ 編/小林紀子 訳/basilico)

この本はロンボルグが主宰して2004年に開催した「コペンハーゲン・コンセンサス」というイベントがベースになっている。38人の経済学者が、世界が直面する難問をいかに解決するか、議論を戦わせ、その問題に解決の優先順位をつけた国際会議だった。

(1)感染症(HIV)(2)栄養不良と飢餓(微量栄養素供給)(3)補助金と貿易障壁(4)感染症(マラリア)(5)栄養不良と飢餓(農業新技術開発)(6)衛生と水(小規模生活用水技術)(7)衛生と水(地域管理給水と衛生設備)(8)衛生と水(食料生産における水の生産性研究)(9)統治と腐敗(10)移住(熟練労働者)(11)栄養不良と飢餓(乳幼児と子供の栄養改善)(12)感染症(基本的保健サービス)(13)栄養不良と飢餓(出生児低体重の発生数削減)(14)移住(非熟練外国人労働者)(15)気候変動(最適な炭素税)(16)気候変動(京都議定書)(17)気候変動(バリュー・アット・リスク炭素税)

以上がそのランク付けである。やらなければならないことが山ほどあるけれど、資金的限界があるというのはどんな時にも立ちはだかる問題で、“優先順位をつける”ということは本当に難しい。それをあえてやったところに、この会議の最大の価値があると思うし、さすがロンボルグという気がする。「○○○コンセンサス」という言い方も、いろいろな場面で使えそう。

この会議は2008年にも開催されているので、もしかしたら今年第3回目が行われる可能性がある。やるとしたらどんな会議になるのか?ちょっとアンテナを張っていようと思う。

日々本 第81回 針谷和昌)

hariya  2012年6月10日|ブログ