しばらく「サッカー 本の宇宙」からどんな本を皆さんが手に取るか眺めていると、とくに若い人たちが手にすることが多いのが、この『主将戦記 宮本恒靖』です。
“2010年サッカーワールドカップ日本代表応援オフィシャルカフェ”(説明しようとして書いてみると長いですね)である『サムライブルーカフェ』に150冊のサッカーの本を面陳して「サッカー 本の宇宙」を展開した時のブログ第1回(10/6/18)に書いたのが上の文章。同 第8回(10/6/21)でも宮本選手が書いた『主将論』を取り上げました。
そんなこんなでかなり思い入れのある選手の1人ですが、現在、慶大三田キャンパス生協書籍部で展開している「本の宇宙 presents 会社の本棚」の本の宇宙の棚にもこの本を並べてもらいました。それを自ら買って、約2年振りに読んでみました。
『主将論』(宮本恒靖/幻冬舎新書)
宮本恒靖はどんな選手(どんなことを志向する選手)だったんでしょう?
アルゼンチン代表でプレーするディエゴ・マラドーナを見てサッカーを始め(p95)、朝 小学校のサッカークラブの練習に行こうと歩いていた時、歩いている自分を他のところから見ている自分の声を聞き(p98)、『今日は良いプレーができる』という楽観的な気持ちで試合に臨むようにし、同時に試合中に起こりえることを予測した(p108)。勝つためには試合中、常に頭をフル稼働させて試合の流れを読み(p76)、なにかに腹が立ったとしても自制して (p93)、一度ピッチに入れば年齢は関係ないと割り切って(p123)、どんな逆境においてもポジティブな思考でいた(P208)。今までに一度だけ、周囲の声がまったく聞こえないほど集中、それは2002年日韓ワールドカップ第2戦のロシア戦前だった(p101)。
ではどんなキャプテンだったんでしょう?
キャプテンマークには殊のほか関心があって小学校5年の頃からキャプテンマークが大好きだった(p96)。中学2年で新キャプテンに選ばれた時、キャプテンというポジションがすごくしっくりきて、『良いもんだな』と思った(p96)。苦しい時は、キツイ選択をして(p37)、苦しいときはミーティングをやった方が良いと考え(p127)、勝ちたい、あるいは成功したいと思い、そのためにやらなければならないことが見つかったのであれば、すぐに行動し(p64)、みんなにも協調してもらいながらチームをまとめ、勝利に導いていく(p6)。常に相手に考える余地を与える話し方をして(p115)、キャプテンとして、常に若い選手に『見てるよ』ということを意識させ(p122)、キャプテンマークが腕にあろうがなかろうが関係なく、いつもキャプテンたる意識で(P219)、毅然とした態度、モチベーターであること、冷静であることを大切にする(P204)。
そして、どんな未来を描いているんでしょう?
多くの日本人選手が海外に出て、親善試合は海外で集合し、戦って解散ということができれば理想的であり(p191)、パスサッカーが今後の日本のベースになるのは間違いなく、また前から積極的に相手にプレッシャーを掛けて、ボールを奪って速く攻めるというコンセプトも良くて、あとは優秀なFWをどう輩出していくかだと考えている(p194)。そして元々教えることは好きで、指導者という職業が『面白いかもしれない』と思っている(P214)。
現役引退して、今秋から先ずやり始めることは、スイスにあるFIFA大学院(FIFA Master)へ行って勉強することだそうです。元選手として日本人初の挑戦、そして何よりも学び続ける姿勢。近い将来、間違いなく日本のサッカーそして日本のスポーツの新たな境地を切り開いていって、遠い将来、2代目“キャプテン”になっているかもしれません。(初代キャプテン=川淵三郎氏/以降、JFA会長でキャプテンを名乗った人はまだいません)
(日々本 第78回 針谷和昌)
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