『闘う市長 被災地から見えたこの国の真実』(桜井勝延/聞き手 開沼博/徳間書店)
昭和31年生まれ、趣味はランニングと読書という著者。プロフィールの中ではこの学年と趣味が僕との共通点だ。ただ職業は酪農家であり政治家(福島県南相馬市長)であり、この2つ以外はまったく異なっている。
「言葉を使って人の心を動かす。これが政治家の仕事だと思うよ」(p67)
「警戒区域内でだいたい4000世帯ある」(p84)
「東電エリートの判断能力って(中略)今、この事態に対応できてないし、対応しようともしてないじゃん。社会的にみればそのことが罪なんだよ」(p90)
「今求められているのは、『あなたが必要なんだよ』っていう言葉なんだよな。(中略)自分を孤独に追い込まない、自分が社会的に必要とされている、地域的に必要とされていると、そうした意識を住民に持たせることこそが事業なんだ、と言ったんだよ」(p167)
結構長い時間かけて読んだ、というか、スーッと読めなくて、つっかえつっかえ読んだ気がする。それが語り口のせいなのか、内容なのか、構成からくるものなのか、ちょっとわからない。もしかしたら『闘う市長』という題名にその原因があるのかもしれない。必要以上に「闘う」を意識するよりも、この市長が押さえ気味にじっくりと語ったら、もっと伝わってきたかもしれない。
この市長の本質は、武闘派というより知性派であると思う。それはこの構想に集約されている。
「震災で、新エネルギーに変えるって言った時に、最初考えてたのは、デンマーク・スタイルを考えてたのね。風車をぶっ建てて、土地と金を民間に出させて、売電したやつをその配当として出しているでしょ。だから、彼らやる気出て、儲かるからさ、自然と設備も増えていくじゃん。今回、被災したせいで、農家は米作りを諦めなくちゃならないとこもあるんだから、そうなっちゃった土地をうまく提供してもらって、これをファンドとしてやってみないかって。そういう仕組みを農家に仕掛けてもいいじゃん。それなら自分の土地を手放さなくても金が入る仕組みになるよ」(p220)
(日々本 第73回 針谷和昌)
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