『せいめいのはなし』(福岡伸一/新潮社)
『生物と無生物のあいだ』(講談社現代新書)、『動的平衡 生命はなぜそこに宿るのか』(木楽舎)、『世界は分けてもわからない』(講談社現代新書)などで名文を絶賛されている生物学者・福岡伸一教授の対談集。
対談している相手が掲載順に、内田樹、川上弘美、朝吹真理子、養老孟司の4人。朝吹真理子以外、それぞれかなりな冊数を読んでいるから、無条件に購入。さささっと読んでしまった。
内田樹が「経済活動というのは人間を成熟させるための装置だったというのがぼくの理解」「自己同一性を基礎づけるための消費には『これで終わり』ということはありません」と経済を語り、川上弘美が「もし永遠に生きたら、自分ががん化していることになるわけか」と生物を語る。
福岡伸一が「記憶とはその瞬間瞬間で新たに作られているもの」「観測するから、病気が生まれてしまうのではないか」「闘争せずにいられる時間が長ければ長いほどさまざまなことが学べ」「戦うことより遊ぶことを考える方が、知性的だといえる」と朝吹真理子に語り、養老孟司が「ジブリの制作した短編アニメがあって(中略)、風の音も嵐の音も、ナマズみたいな怪物の音も、すべて『タモリ』の声なんです」とタモリを語る。
朝吹真理子をまだ読んだことがないことと、ここにピックアップするコメントがないことと、関連性があるだろうか。福岡伸一がおそらくこの本のタイトルをつける時にも意識し、朝吹真理子の芥川賞受賞作『きことわ』(新潮社)と、その中でも重要な役割を果たしているという『せいめいのれきし 地球上にせいめいがうまれたときからいままでのおはなし』(バージニア・リー・バートン/岩波書店/大型絵本)のどちらを先に読もうか。『きことわ』は文庫化を待って、先ず『せいめいのれきし』からにしよう。
「私は、動的平衡的世界観で生命を問い続けるナチュラリストとして、できるだけ、こお世界をつないでいきたいと思っています」と宣言する福岡伸一は、最後に対談相手の4人の共通点をこう書いている。
・話していて「核」に触れる方々
・皆さん自由(これまで私たちが信じてきたいろいろな物語から自由)
・何にも増して、異聞が好きなことが、ずっと好きであり続けている人たち
・ある種の正直さお持ちの方々、裏表があまりない人たち
そういう人たちの本を僕も読み続けてきたから、朝吹真理子もきっとハズレることはないと思う。
(日々本 第72回 針谷和昌)
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