日々本 其の六十五「雷雨雹」

腰が痛むので、電車に乗っていつものマッサージへ行こうと駅へ向かう。道半ばでポツポツと雨が落ちてくる。手には『街場の読書論』(内田樹/太田出版)。ここんところずっと読んでいる。Book1stと店名が印刷された紙のカバーがかかっているが、この本を濡らしてはならぬ、と本をかかえながら走った。カバーの濡れがひどくならないうちに、一刻も早く駅に着きたい。しまいには車道をダッシュしていた。

先ず今日は久々の“屋外”の日だった。昨日まで室内での仕事を連続8日。つまり今年のゴールデンウィークは、最後の1日だけ、屋外、それも海沿いと川沿いにいることができる日だった。海沿い、つまりビーチにいた午前中は、それほど風も強くなかったが、帰りに駅に向かう途中、ローラーシューズを履いた小学生女子がピューッとすれ違っていった。「何もしてないのにこんなに…」とか言いながら、強風に体を押されて楽しそうに過ぎ去っていった。

一度家に帰り、チームメートに車で迎えに来てもらって行き着いたのが川沿い。こちらは野球場。うちのチームは今年もう4試合目だが、僕にとっては今年の初試合。野球のために買ったスポーツ用眼鏡をかけてプレーするのも初めて。グラウンドへ着いてすぐ、キャッチャー用具がないことに気がつく。そうだ、いつも自前の用具を持ってくる正捕手が、前回の試合で怪我をしてしまって今日は欠場。そのことを忘れていた。あわてて別の用具セットがある我が家へ2人で取りに行く。

何とか試合開始15分前ぐらいに戻ると、今度は審判から「雨の心配もあるので、すぐ開始しましょう」とのこと。ジャンケンに勝って先攻を選ぶ。すぐに試合開始。わがチームの1番バッターは四球、そのあと盗塁、2番はセンターフライ、3番打者が打席に入る。僕は先発なのに準備がまったく出来ていなかったので、プレーボールからずっとベンチ横でキャッチボールをしていた。さぁ、3番は?とグラウンドを見ると、何だか審判と相手の監督が話し合ってる。ん?打順が違ったかな?と思って近づいていったら、「雷が危ないので、試合中止にします」。

え?始まったばかりなのに?皆で顔を見合わせていると、万が一落ちたら危ないので中止です、とダメを押される。こちらも相手も未練たらたら。どうしようか、お互い練習形式でやろうか、なんて話し合っていたら、雷が本格的にゴロゴロ言い出した。確実にさっきより近づいて来ている。光と音の頻度が高まり、やっぱり落ちたらシャレにならないのでやめよう、と解散して車に乗った直後に、いきなり大雨が降って来た。周りを歩いていたり自転車の人はずぶ濡れ。傘が意味をなしていない。

結果的に審判は良い判断だったね、と車の中で話しているうちに、雨がやみ、しばらくすると晴れ間も見える。せっかくだからバッティングセンターへ行こうか、ちょっといやだいぶやり足りないものね、ということで近くのバッティングセンターへ向かう。サンダルとスパイクしかないから、スパイク履いてやろうか、ユニフォームも着ているし、マイバットだし、帽子も冠ってるし、このオッサン何?って顔されそうだなぁ、なんて話しているうちに到着。

あれ?駐車場の門が閉まってる。入口へ行くと、「天候不良のため今日は中止です」「強風のため今日は中止」という2枚の貼り紙。今日はこういう日なのね、とチームメートと話しながら家へ帰る。そして、この文章の先頭に戻る。

日々本 第65回 針谷和昌)

hariya  2012年5月07日|ブログ