『「地球温暖化」神話 終わりの始まり』(渡辺正/丸善出版)
1)NOAA NCDC
2)NASA GISS
3)UEA CRU
世界の気温データを発表してきた3機関だそうです。知っているのは NASA ぐらいだけれど、名称を書くとこうなる。
1)米国商務省海洋大気圏局 気候データセンター
2)米国航空宇宙局 ゴダード宇宙科学センター
3)英国イーストアングリア大学 気候研究所
これらの機関が、自ら発表したデータの元データ開示を要求されても一部しか出さなかったり、CRUジョーンズ所長がマン(マサチューセッツ大学 古気候学者/「ホッケースティック」グラフ発表者)本人に「マンが『ネイチャー』論文でやったトリックを使い、気温低下を隠す作業を完了」とメールしたり、温暖化懐疑派の論文が載った雑誌CR(クライメートリサーチ)への投稿や論文の引用をやめるよう仲間に言おう、おたくの雑誌とは縁を切るとも言おうというメールを、やはりマンとジョーンズがやりとりしたり、という話が続く。
IPCC(気候変動に関する政府間パネル)第四次報告書のアジアの章に「ヒマラヤの氷河は2035年に消失」とあって、これは「2350年」の誤記と判明。しかもその2350年の根拠時代も怪しいという。この一件には「ヒマラヤゲート」の名がついたそうだ。(この章には、統括執筆責任者1名、代表執筆者1名、執筆協力者3名、査読編集者1名の計6名の日本人が名を連ねているという。)
他にもある“加工”事件の影響で、各国国民の意識は変わりつつあるそうだ。ドイツでは「温暖化が不安」が62%(‘06)→42%(‘10)へ、アメリカでは「温暖化の原因は人間活動」と思う人が50%(‘06)→34%(‘10)へ、さらに「気候科学者は教義に合うようにデータをいじってきた」と思う人が約70%(‘11)、「地球温暖化について科学界は含意済み」25%、「科学者の見解はバラバラ」57%などなど。
ほかにもポイントだけ抜き出すが、見逃せない情報が多々ある。
‘04年に出来て’10年に閉鎖されたシカゴ炭素取引所(南北米大陸唯一の排出量取引機関)はオバマ(当時上院議員)とゴアが設立した。過去6年間でEUは炭素取引に22兆円を費やしたが削減効果はゼロ。IPCC報告書作成にはグリーンピースとWWFに名を連ねる研究者が何人も参加。「温暖化がハリケーンを強化中」という話は審査もなく学術論文でもないある保険会社のレポートがもと。
そして最も印象的な著者の意見は以下の2つ。
「CO2脅威論は、国連の組織が唱え始めた。京都議定書は国連の作品、COP(気候変動枠組み条約の締約国会議)は国連の事業だといえる。…CO2が『危ない温暖化』を起こすなら、先進国の富を引き出す口実にふさわしい…」
「「省エネ」ですむのに「CO2」や「エコ」をもち出すから、日本社会が狂ってしまった」
原発再稼働でいま政府は動き始めているが、もともと地球温暖化していないのであれば、足りない分は火力でも、という意見が強くなるはず。本当に温暖化していないのであれば、もう神話は終わりにしてほしい。そして火力でも足りない分は、「省エネ」技術を高めることで差し引きゼロ、いやプラスにするぐらいの新技術開発へ全力を注ぐべきだと思う。
こんなに危険な原発でも再稼働という話が出てくる大きな要因のひとつに、温暖化があるのだから、そこが崩れれば根本的に選択肢が異なってくる筈である。
(日々本 第60回 針谷和昌)