激しく変わりゆく時代に対する危機感から、自分が自分であることの意味を強く求め、神話を唯一絶対のものとして諸伝承を整理統合して作り上げられたのが『古事記』、神話は歴史を記述する際の資料という認識で編まれたのが『日本書紀』なのだそうだ。その『古事記』を読みとく、という副題がついている本書には、古事記のあらすじを辿りながら、たくさんの神様が出てくる。
天の中心にあって世界を支える神
生命を生み出す神秘の力にあふれた神
天に向かって伸びゆく力の神
天と地を支える確かな土台の神
その土台に広がる原野を覆う豊かな雲の神
男神イザナキ
女神イザナミ
二人が生んだ島々それぞれの神
家をつくる石や土、風にたえる屋根の神
海や河口の水門の神
泡立つ水の神
山の分水嶺から流れ出る水の神
水を汲む柄杓の神
土、山に立ちこめる聖なる霧、霧の奥に広がる深く暗い谷、人がそこに入り込むと思わず道を失い、迷いの中に翻弄される、そういう山の脅威の神…
赤貝の女神や蛤の女神なども出てくるし、川の雁、鷺、カワセミ、雀、雉が神の葬儀に加わったりする。
「タク」という語から「タカ」も「タケ」も生まれ、従って「高」と「竹」は同じ言葉から生まれた。
苔むす、草むすの「ムス」の連用形が「ムシ」で、昆虫の虫。
「オリエンテーション」は「オリエント」「東はどっちだ」「太陽が昇るのはどっち」が語源。
最初の生命は「葦」、「アシ」は「悪し」に繋がるので「ヨシ」に変え、「吉」に繋がる。
「くしび」は不思議で神秘的なことを意味する動詞「霊(く)しぶ」の名詞形で、同じ様な意味を表す形容詞が「奇(く)し」「奇す」、そこから「薬」「医者(くすし)」へ。
古代の人は自分たちが暮らしているこの大地も生きていると考え、その大地の生命を司る目に見えない霊力を「国魂」と呼んだ。
現状、読み手としてこのように表面的に気になる部分をピックアップすることしか出来ず、物語の背景にある様々な意味を考えるまでに至らない。ただ、何か大切な部分へ少しだけ触れることが出来たような気にさせてもらった。まさに“さいしょの新書”とうたう「ちくまプリマー新書」らしい1冊。
(日々本 第44回 針谷和昌)
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