日々本 其の三十七「1・ 1・ 1」

もうなくなってしまったけれど、以前、銀座にあったいつも行っていた洋書屋へ、作家の友人と初めて一緒に行ったことがあった。店内に入ってから、彼を気にすることなく僕はいつものルートで店内を回ったけれど、彼は後から着いてきて「僕と同じルートだ」と言って笑った。なるほど、興味あるジャンルが近いんだなとその時は思ったけれど、本当にピッタリと同じだったかはわからない。ただ、誰もがいつも行く本屋さんの「いつものルート」を持っているんだということは、彼の言葉で初めて意識した。

先日、とある町のとある本屋さんに入り、いつものルートを回った。大きな興味はないけれど、何となく眺めながら通り過ぎる「児童書」のコーナーで、この本がパッと目に入った。被災地の学校はどうなっているだろう?ということをここのところずっと気にしていたので、被災地ではないけれど学校の様子が手に取るようにわかりそうな本、というのが一目でわかった。

『1ねん 1くみの 1にち』(川島敏生 写真・文/アリス館)

黒板の上の方から俯瞰で撮った教室の写真。ここには誰もいないけれど、これから小学校1年1組のどんな1日が始まるのかという期待に満ちた表紙。途中、体育でグラウンドに出たりするけれど、この教室の移り変わりを追っていく写真集。アイデアも、アングルも秀逸、そして吹き出しに入れた生徒たちのコメントというスタイルが楽しい。

この本を買ってほんの1~2日後、今度は被災地の小中学生が撮った写真集というのを見つけた。駅前の本屋にたくさん平積みされていて、荷物になるから帰りに買おうと思っていたら、その帰りに知人と会ってずっと話しながら電車に乗ったので、結局寄れずに買えなかった。降りた駅で2~3軒の本屋で探してみたけれど、どういう訳か、ない。

やっぱり本は、思い立った時が買い時ですね。

日々本 第37回 針谷和昌)

hariya  2012年3月03日|ブログ