代官山・蔦屋書店は、先ず本の並べ方が完全にジャンル別になっている。雑誌のバックナンバーが揃っていて本もディスプレーされていたりする図書館のようなカフェがある。そういうところが本の宇宙が社団になる前に企画した“新しい図書館”の姿に近いものがあって、ちょっとワクワクする空間になっている。先日、初めてこの書店へ行った時に2冊買った。前に取り上げた『福島の子どもたちからの手紙 ~ほうしゃのうっていつなくなるの?』(KIDS VOICE 編/朝日新聞出版)と今回書こうとしている『トラベル travel』である。
『トラベル travel』(横山裕一/イーストプレス)
面白いもので、「本をよく買う」本屋と「本をまったく買わない」本屋に大きく分かれる。その中間は意外と、ない。前者の本屋には「買いたくなる」何かがあり、後者にはそれがない。本を購入するという行為の下支えになるのはある種のワクワク感。もう少し具体的に言うと、本が置かれているある空間から、光が発しているような感じ。人ではないけれど、後光が射しているというか。まぁ、とにかく光っていて、その空間が明るいのである。
この書店に初めて行って早速買ったということは、これからも結構買い続ける本屋になりそうである。特別に光るように特集されて展示販売されていたのが『トラベル travel』の作者・横山裕一の本群。この人の作品は何かでちらっと見たことはあるが、ちゃんと見るのは初めてだった。同じ本が何冊も面陳されている効果もあって、いずれも魅力的。その中でもいちばんシンプルなものを選んだ。
この作者は絵を定規を使って描いている、と思わせる。いろいろな線が描ける定規を使って描いた曲線や直線。本当は、どうだか知らない。でもそういう線をたくさん描いていくと、この漫画が出来上がるような錯覚に陥らされる。セリフはひとつもない。ただただ絵の力だけで見せて行く。ページを捲らせて行く。とてつもないパワーがある。
物語としてはSFだと思う。同じものを時間をずらしながら丹念に描いていく。小説のような漫画。はまる人はメチャクチャはまると思う。
(日々本 第34回 針谷和昌)
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