福島県いわき市の中学校の校長先生から、第一原発10km圏内から移動して来た学校でいま必要なのが、水とホッカイロと本だと聞いた。だから(社)本の宇宙で本を集めてもらえないか。その前にこんな本をというリストをもらい、それを検討して返事するのでその上で集めてほしいとのこと。何校かあるので何セットかになるそうだ。
という訳でいま、(社)本の宇宙の生みの親である福澤諭吉記念文明塾の修了生たちに協力を依頼し、推薦する本をリストアップしてもらっている。そんな最中に、この本に出くわした。タイトルを見て、あまりにもダイレクト過ぎるとは思ったが、ちょっと立ち読みしてみると止まらなくなる。そんないきさつで買ってきて読んでみた。
『14歳からの原発問題』(雨宮処凛/河出書房新社)
まずこの著者である雨宮処凛(作家・活動家)は「あまみやかりん」と読む。かりんさんは99年にイラクへ行き、劣化ウラン弾による病気に苦しむ子どもたちに出会った。03年、イラク戦争が始まりそうだという時に子どもたちの姿が頭に浮かび、戦争の1ヶ月前にデモをしに再び現地を訪れた。このリアルな行動が最初に書かれている。これらの行動がこの本自体を担保している。そう思って読み始めたが、実際にこの本に書かれていることは、彼女の3.11後の行動から生まれたものであることがわかる。
4.10高円寺での15,000人のデモへの参加、90年代後半に原発で働いていたというAさんへのインタビュー、『フクシマ論 原子力ムラはなぜ生まれたのか』(青土社)の著者・開沼博へのインタビュー、5.31原発怖いぞコノヤロー交流会(居酒屋での200人の原発談義)への参加、その場所での小熊英二 慶應義塾大学(歴史社会学)教授へのインタビュー、はんげんぱつ新聞編集長にして原子力資料情報室共同代表の西尾漠へのインタビュー、獣医・なかのまきこへのインタビュー、映画監督・鎌仲ひとみインタビュー。
そのいずれもが、問題提起をしつつわかりやすく伝えられる。とくに小熊教授の「(原発は)典型的な昭和の重厚長大型巨大プラント」という言葉を始めとするお話は、今回の多岐にわたる問題の全体像が明確に整理されていくように思われるし、鎌仲監督の「抵抗力のなさが、やりたい放題の電力会社やメディアを支えてきた」「時々電力会社に電話するぐらいできるでしょ。それが集まればものすごく大きな力になる」という言葉は、われわれ1人1人が行動するということの重要性を示唆している。
インタビューが進み深まっていく度に、かりんさんと共に自分も話を訊き出し、原発に関する知識や見識を自らのものにしていっているという感覚が生まれる。この本を推薦本のリストに、ぜひ加えてみたいと思う。
(日々本 第29回 針谷和昌)
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