
「ぼくの書斎にある本はなんでも読んでいいです」
ぜんぜんクライマックスでも何でもないところに出て来たこのセリフが、僕の心の琴線になぜか触れてしまった。爽快感と安心感。爽快で安心で、どちらもノーリミットという感じの幸福感。
『三四郎』(夏目漱石/Sony Reader)
三四郎が初めて家を訪ねて行った先輩が突然出掛けることになって、留守番を頼まれた後に大きな声で言われた言葉。「別におもしろいものもないが、何か御覧なさい。小説も少しはある」と続く。この後それどころじゃない事件が起きて、三四郎はその本を1冊も手にしない。だから、何かの伏線にもならないし、このセリフによって話が急展開していった訳でもない。
食品系企業のラグビー部をお手伝いすることになって、クラブハウスへ行くと、飲み物も食べ物も豊富にあって、好きなだけ飲んで食べても構いませんというスタイル。その時も同じような爽快感と安心感を味わった。それからもう6年経つが、今でもクラブハウスにはその雰囲気があって、それだけが理由ではないけれど、仕事中に死ぬならこのラグビーグラウンドでこの感覚に包まれて死んでもいいなぁと思える場所である。
どちらも「オーバーだなぁ」と笑われるかもしれない。けれどもふだんいろいろな部分で節制して生活していると、こういうセリフや雰囲気に随分ホッとする。珍しく大船に乗った気分になる。それで大船で海へ乗り出して行く訳ではないのだが、そういう基地があるということが、心のやすらぎになる。
リミットをはずしたら危ない、ということを常に意識しているのだが、そのリスクヘッジを取っ払った先に何があるのかを、そろそろ追求してみたくなってきた。ネガティブチェックをやめて、すべてポジティブフレーミングで行く。その先にしか、ゾーンや、悟りはないのではないのか?最近そんな気がしてきた。
(日々本 第23回 針谷和昌)
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