買ってません。落合が語る66の何とか、というノウハウ本形式の本なので、なかなかレジまで持っていく気になりません。でも重要なところを立ち読みしてしまったので、そのお礼(お詫び?)の意味も込めてここで紹介します。
プロ野球中日ドラゴンズ前監督。2007年日本シリーズでパーフェクトピッチングを続けていた山井投手を9回から代えた采配に、賛否両論が入り乱れたことは記憶に新しい。山井投手にとって一生に一度のチャンス、本人のためにも投げさせるべきでしょう。いや、勝つための究極の采配で、失敗したらとてつもない非難を浴びるであろう状況での大英断。大きくはこの2つの意見に分かれる。
前回「リスクマネジメントが成功した時には、何も起こらない」という話を取り上げたばかりだが、この時ばかりは、リスクマネジメントは成功したけれど、それでいいのかという意見が飛び交って、論争が巻き起こった。
この問題は、最終的に「プロスポーツとは何か?」まで行きつくテーマだと思う。プロ野球史に残る記録を、ファンが観客席であるいはTVの前で体験できる千載一遇のチャンス。そういう目で見ればそのチャンスを摘み取ったいや奪い取った落合監督は、プロとして持っているべきサービス精神をまったくもって持ち合わせていないのでは、ということになる。
一方、スポーツは「勝つ」ということが目的となっていて、そのためにすべてのプレーや作戦がある。勝つためにしのぎを削ることで、プレーが洗練され、見たいと思わせる試合が生まれる。つまり勝つことを目的とした活動が極まって、お金を払っても見る価値があるものとなり、その延長線上にプロスポーツがある。「勝つ」という目的はスポーツの根本をなすものであり、采配もそのためにあって、記録や物語は二の次だ。そういう意見も当然ある。
いずれにせよ、落合監督はクールに後者を選んだと、僕はずっと思っていた。ところが、本人が書いたこの本によると……この先を書くと、お詫びやお礼どころか、ネタばらしになってこの本のためにならない。この部分だけ読んでも面白かったので、いつかきっと買うことになると思う。またどこかのチームの監督をやって欲しいなぁ。
(日々本 第21回 針谷和昌)
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