『門』(夏目漱石/Sony Reader)
ソニー電子書籍リーダーで文字サイズをSにして読むと1ページに最大264文字、それが587ページある大作。毎日こつこつと読んできて、ついさっき読み終わった。
Reader は、パッと開くと十数枚入れてある写真がアトランダムにで出てくる。だいたいが自分の写真だけれど購入当時たまたま手元にあったシャラポワの写真もあって、それが出た日は何となくラッキーという気分で1日をスタートすることができる(笑)。
この作品は1910年に書かれたもので、つまり100年前の作品。100年前の人びとの暮しが淡々と書かれていて、先ずそれがよくわかる。けれど物語として盛り上がっていく訳でもない。幾つかの小さな紆余曲折はあるが、粛々と日々の暮しが進む。
作品も2/3ほどを過ぎ、このままずっとドラマは起こらないんじゃないだろうかと思い始めたところで、突然主人公にピンチが訪れる。俄然盛り上がるかと期待すると、主人公はそこに真っ向から対せず、避けて通るような形でそのピンチをやり過ごす。その危機のもとの過去の話が、結果的に最もドラマチックな出来事なのだが、そこについては殆ど書かれていない。読者としては、自ら察するしかない。
目をつぶって通ろうとするけれど、通れなくなりそうになり、でも通ってしまって、その後もずっと気になる。そんな尾をひく感じが、終盤にずっと続き、そのままお話は終る。この尾をひく感じは、読んだ後もずっと続き、消えることがなさそうである。淡々としていながら印象に残る。名作として100年生き続けている理由がわかる気がする。
(日々本 第13回 針谷和昌)
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