『勝てる組織』(土田雅人/小学館)
昨年のラグビー日本選手権覇者サントリーサンゴリアスで「気仙沼の高校生に本を」集めた結果、この本が2冊あった。僕はサントリーのラグビーをもう一度勉強しようと、その直前に大きな本屋で買っていたので、ちょっと失敗したなと思った(笑)。でも自分で買った本をじっくり読んでみると、02年の発行で10年経っているにもかかわらず、まるで今のサントリーのラグビーのことが書いてあるように思えた。
「ボールを獲得したら蹴らずにボールをつなぎ、ゲームを継続して徹底的に攻めようとする」
「相手に走り勝つランニング・ラグビー」
10年前のサントリーの土田監督が、オーストラリアのACT(オーストラリア首都圏代表)ブランビーズのエディー・ジョーンズ監督にヒントを得たラグビー。そのラグビーをやり通し、サントリーは年間“5冠”(ジャパンセブンズ、ウェールズ代表戦、東日本社会人リーグ、全国社会人大会、日本選手権)を達成する。
そして今のサントリー。エディー監督が「アグレッシブ・アタッキング・ラグビー」を掲げ、まさに蹴らずにボールをつなぎ走り勝つラグビーをやり続ける。去年のトップリーグ準優勝、日本選手権優勝、そして今年のトプリーグを(1月上旬現在)無敗の9連勝中。
10年前の5冠時のスクラムハーフ、そして去年で引退し、今季から広報兼採用となった田中澄憲担当に訊いてみた。10年前も今と似たラグビーをやっていたんですか?「そうなんですよ、ラグビーってグルグルまわってるんですよ。北半球と南半球のせめぎ合い。北の意見が強い時は、守りのラグビーが有利になり、南が強い時は攻めのラグビーが優位のルールになる。ルールによってやるラグビーが変わるんです。今は南のルールなんです」
続いてもう1人、土田監督時代に始めラグビーチームのメディカルシステムを開拓した高澤祐治ドクター。「ラグビーにはサイクルがあるんですよね。ランニング・ラグビーに相手が対応しようと試みてしばらくすると、それまでのものが通用しなくなる。それで変えていく。それが巡り巡って、またランニング・ラグビーになってきた」
そういう2人の話から、僕には上に上がっていくスパイラル状の竜巻のような絵が見えた。ラグビーのスタイルはグルグルまわりながら進化しているのだ。
9連勝目となった試合のスタンドで、著者の土田 現・強化本部長と隣り合わせになった。読みましたよ、土田さんの本、10年前も同じラグビーをやっていたんですね。試合中にそう話しかけると、5冠監督はちょっと照れくさそうに笑っていた。
(日々本 第8回 針谷和昌)
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