ストイックなオリンピック金メダリスト清水宏保。まだ遭遇したことはないけれど、ぜひ会いたいアスリートのひとり。一度サングラスメーカーの友人と会食中、話題が清水選手の話になり、ちょっと呼んでみようか、と友人がその場で電話を掛けたのが最も近づいた瞬間(笑)。その時は留守電になっていて、突然の遭遇は実現しなかった。
『プレッシャーを味方にする心の持ち方』(清水宏保/扶桑社新書)
さすが心技体研究&実践の第一人者。緊張(交感神経が活発)と弛緩(副交感神経が働く)を繰り返すことでゾーンの領域に入ることができると説き、「プレッシャーはサプリメント」だと言い切る。
・緊張をほぐすには、指先をほぐす、体の先端をほぐす
・足の指と指の間を広げる
・自分の手のひらの匂いを嗅ぐ
・自分の体を意識のペンでなぞる
・頭の中で∞の字を描き右脳と左脳をつなぐ
こんなに楽しくすぐに試してみようかと思わされる方法もいろいろと出て来る。「非常識は結果を出せば常識になる」という話は、大晦日に亡くなられた松平康隆さんに通じるものがある。加えて子どもの頃からの話から、小さく、ぜんそく持ちだった清水選手が、世界を制するスケーターになったのは、お父さんの熱意と、家族のサポートと、そして何より本人の研究者のような追求心であることがよくわかる。
この本は全体として新書によくあるハウツー本のスタイルになっているのだけれど、彼が次に本を出すとしたら、僕はこうリクエストしたい。
1)ゾーンをテーマに書く
2)私小説風に幼い頃からの人生を書く
ゾーン(アスリートの超集中状態)を自在に操れる人は、おそらく日本いや世界広しと言えど、清水選手しかいないのではないか。この本にも垣間見られるが、そのノウハウをすべて解き明かす本は相当魅力的。そして清水選手、清水一家の物語は、とてもドラマチックだと思う。それを綴っていくだけで、われわれが感じ、考え、得られるものは大きいと思う。次作にも、期待。
(日々本 第6回 針谷和昌)
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