25日の日経新聞夕刊に「2銀河衝突、大輪のバラ NASAが画像公開」と題して小さな記事と写真が載っていた。NASAが24日までにハッブル宇宙望遠鏡で撮影された大小2つの銀河が衝突している画像を公開した、とある。写真は上にある銀河が花、下にあるもう一方が茎のような構図。「衝突してるようには見えないなぁ」なんて思いながら先日買った宇宙の写真集を開いてみた。
『宇宙の地図 Cosmic Atlas』(観山正見 小久保英一郎/朝日新聞出版)
むかし『パワーズ・オブ・テン』という映像を見たことを思い出す。寝転がっている人から、空へ、宇宙へ、宇宙の果てへカメラは引いていき、翻ってそこからぐんぐん近づいてきて、今度は人の体の中にまで入っていく。マクロの世界からミクロの世界へ。10倍ごとにあるいは1/10ごとに見せていく。そんな映像だったと思う。
それと似た発想の作りになっていて、この本はどこまでも10倍ずつ広がっていく宇宙を、すべて写真で見せる。前半は星の個体としての美しさに見とれ、後半は『ブレードランナー』のレプリカントが見た宇宙の果てはこんな感じだったのでは?という写真が並ぶ。不思議で、綺麗で、酔ってしまうような感覚。小さい子にも見てほしいし、大人が手に取れるところにあって日々の生活から離れてふっと宇宙へ思いを馳せられるように、一家に一冊あったらいいなぁと思わされる本だ。
さてここで最初の話に戻るのだが、この本の中に「三つの銀河 Arp 273」という写真が出ていて、「アンドロメダ座にある相互作用する3個の銀河」とある。そして「下にある銀河が上にある渦巻銀河を通り抜けた(後略)」と続く。この写真が夕刊の写真と似ている気がして、両者を隣同士に置いて見比べてみた。
同じである。モノクロ(夕刊)とカラー(本)の違いはあっても、写真はまったく同じ。本にも写真はNASA, ESA and the Hubble Heritage Team からとある。う~む、どうなってるんだろう。画像公開からだいぶ経って、新聞が掲載したということなのだろうか。そうだとして、「衝突」したのか「通り抜けた」のか、どっちなんだろうか?違う意味で、とても不思議な感じだ。
(ことしの本棚 第99回 針谷和昌)
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