
話の結末がなく終わるお話。そういうのが10話続く。10話目は本の題名と同じ「どこから行っても遠い町」という作品。収録されている中の1つの話のタイトルを本全体のタイトルにした短編集だと思う。ところがそれが最後の11話目でひっくり返る。
『どこから行っても遠い町』(川上弘美/新潮文庫)
11話目を読んですべての話が繋がる。老若男女いろいろな人が主人公になって、11話のお話それぞれが進む。気がついてみれば今回の主人公は何回か前に出てきた脇役なのである。話毎に視点が変わり時が前後する。
個々の話は完結しているようでしていない。それらが繋がって全体で大きな物語になっている。11話集まるとある一定の時間と空間つまり“時代”になる。いやちょっと違う。お話全体が“町”なのである。
そう考えるとこの本のタイトルの深さが何となくわかる。どこから行っても遠い町にもう一度訪れたくなる。それで最初の話をまた読み出す。エンドレス。いくら読んでもいつまで経っても町のコアに辿り着けないようなでも町のことを少しずつ理解していくような不思議な感じ。こんな本は初めてだ。
(ことしの本棚 第96回 針谷和昌)
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