中学生や高校生の君たちに人生で本当に大切なことを伝えたい、と「はじめに」で王さんが書いている。この巻頭の文を読むまでそういう本だと気がつかなかったので、筆を引っ込め、この本には線を引いたり思いついたことを書いたりしないで、早く読んで『気仙沼の高校生に本を』で送る本群の中に入れることにした。
ちゃんとサブタイトルを読んでいれば「壁にぶつかっている君たちへ」の君たちが学生を指していることに気がついたかもしれない。でも中高生に通じる大切なことは大人にとっても大切なことだろうと、あまり気にしないで読んでいった。
改めて思うが、スポーツは結果がわかりやすい。“勝つ”という誰もが目指す目標がはっきりとしているから、良いか悪いか、成長しているかそうでないかが、1試合1試合、1つ1つのプレーでもよくわかる。つまり、自分の成長がわかりやすく、それはモチベーションに直結する。だからグーンと伸びることもあれば、伸び悩むこともある。上手くいかない時は、これほど厳しいものもない。誰の目にも、負けや失敗や下手なことがわかってしまう。それでも続けられるかが勝負。自信とまでいかなくても、自分に対する希望。
永らくの王ファンでありながら初めて知ったこと。それは、王さんが「済んだことを振り返らない」人だということ。「もうちょっと反省してもいいんじゃないか」と感じる人もいたでしょう、と自分で言っている。そして「興味があるのは自分で変えられる未来のほう。だからいつも先のことを考えています。」とも。
(ことしの本棚 第90回 針谷和昌)
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