『FUKUSHIMA 福島原発メルトダウン』(広瀬隆/朝日新書)
間違いなくこれを読んだら本気で海外へ移住しようかという気になります。地震大国日本には54基の原発があるけれど、そのどれもがいつ大地震が起きてもおかしくない場所にあるということです。
新聞広告を見た日にすぐ買って夢中になって読み次の日には読み終えたのですが、とくに「浜岡の原発震災を防げるか」という項や「浜岡原発 破局の恐怖」という章まであって、浜岡原発に対する警告が何度も出てきます。この本の出版直前に菅首相が「運転停止」を発表したのは偶然でしょうか。首相がこの本を事前に読んで、それで発表したと説明されたとしても、何の疑問もなく納得できるくらいのタイミングです。
これは新聞による話ですが、首相は「評価は歴史の中で判断してほしい。国民の安全と安心のための決断だ」と言ったそうです。まさに大英断。また浜岡以外はどうなる?と原発がある自治体の首長が言っているそうですけれど、その疑問は当然でしょう。それらに対する英断も果たして今後首相から出てくるのでしょうか?
さらに少し前の新聞には、世間の約半分の人が原発継続はやむを得ないという意見だと載っていました。僕はビックリしましたが、そのことには広瀬隆も驚いていて、本の中でその理由として原発がないと電力不足になるというアピールが浸透しているからだと述べ、実際は原発がなくても火力発電、水力発電で日本の電力は賄えるというデータを掲載しています。
もうひとつここに記しておかなければと思うことがあります。原発は海に温排水を出し、発電量の2倍の熱で海を加熱しているそうです。日本を加熱しているのは原発がその最たるもので、温暖化対策に有効なクリーンエネルギーという話は成り立たない、ということです。この地球温暖化というキーワードが、半分のやむを得ない派を後押ししていると思われますので、これは重要な指摘だと思います。
原発や放射能への関心が日に日に高くなってきて、関連する本を立て続けに読んでいます。今後取り上げる本も何冊か続くかもしれません。
(ことしの本棚 第49回 針谷和昌)
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